2014年07月20日

[広報]2014/8/3京都オイコスの会での講演内容のお知らせ

「オイコスの会@京都」は、仏文・哲学者の慶応大学堀茂樹教授と、経済評論家、岩本沙弓教授を講師として迎え、誰でも参加できる哲学・経済の勉強会です。堀教授、岩本教授による充実した内容の講義とともに、欧米の大学やワークショップでは一般的になっている参加型討論も行っているこの会を、私も以前から注目していました。

2014/8/3開催のオイコスの会@京都に、ゲスト講師として講演する機会をいただきました。当日はその他に、岩本教授による「考察、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の改革」という講演、および堀教授、岩本教授、それに私の3人によるトークセッション、および参加者によるディスカッションがあるそうです。
当日私の担当分では、下記のような講演を予定しています。

演題「イギリスからみえてくる日本の問題点」

伊藤博文ら長州藩士がロンドン大学(現ユニバーシティカレッジロンドン)に留学してから今年でちょうど150年になる。このいわゆる長州五傑に象徴されるように、日本は英国から、科学から政治システムに至るまで様々なものを導入することで自らの社会を変革してきた。ところが、最近の日本の政治・社会の混乱をみると、西洋で発展した民主主義から近代科学までの様々なシステムの日本での受容が、根幹にある精神が欠け落ちたまま、いまだに表面的・形式的なものに留まっている部分があり、それがいよいよ大きな問題になってきているのではなかろうか。別の言い方をすると、「翻訳で欠け落ちたもの」が問題である [1]。

今回の講演では、イギリスの社会と価値観の基本について、いくつかの具体的事例を紹介しながら論じたい。講演の前半では、イギリスの近代化と教育、組織と個人、日本における英文学の受容で欠け落ちた政治の視点、英語改革と科学およびジャーナリズムの精神、等の論点を予定している。

講演の後半では、英国の健康保険制度と科学について考えたい。種類は大きく異なるが、健康保険制度と科学は双方ともに、イギリス人が長い歴史の中で戦って勝ち得た「力」である。彼らはいったい何を相手にどのように戦ってきたのだろうか。実はこの二つは、日本にとっても大きな「力」である。ここでは、日英両国の歴史と最近の事例をみることで、健康保険制度と科学の再生について考える助けにしたい[2, 3]。

私は京都大学で学生として学び、医師として診療、その後助教として研究活動に従事していたが、5年前からユニバーシティカレッジロンドンに移籍し、現在同大学で研究室を主宰して免疫学の研究を行っている。こうして日英両方の社会の中を生きることで、2国の社会・人々の類似点と相違点について、否応なく多くのものを学んできた。日本人とイギリス人は(そしてその2つの社会は)、意外なところで似ている一方で、見えにくいところで大きく異なる。今回の講演では、ネットや新聞では見えてきにくいこうした部分について伝えたいと考えている。

参考
"Let it go"と「ありのまま」の違い
混合診療解禁とは ー国民皆保険とTPP
嘘とポエムと内部告発


どの人も、知識・経験には限りがありますが、異なった背景を持つ人が集まると、その限界が超えられて、見えてこないものが見えてくる可能性があります。今回、文学/哲学、経済、医学/生命科学、というあまりみない取り合わせの3人が講師として集まることになります。私自身、この会のことを楽しみにしています。

*オイコス担当の方によりますと、まだ空席があるそうです。興味のある方はぜひご参加ください。参加手続きは下記リンクにて。
http://oikos2013.blog.fc2.com/blog-entry-17.html
ラベル:広報
posted by 小野昌弘 at 20:53 | TrackBack(0) | 広報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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