2014年09月20日

アイスバケツチャレンジ、難病の研究・治療

ロンドンの真ん中で氷水かぶり(アイスバケツチャレンジ)をしまししたので、その報告です。
今回のアイスバケツは、ラテン歌手で小説家、さらには検察問題に取り組む「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」会長として名高い八木啓代さんからご指名いただきました。それで本日、ロンドンの中心部にある子供病院「グレートオーモンド通り病院 (Great Ormond Street Hospital)」の前で、難病ALSの治療・研究のために、アイスバケツチャレンジ=つまり、バケツ一杯の氷水をかぶってきました。ちなみに、今日のロンドンの天気は晴れ、気温は16度でした


アイスバケツチャレンジの趣旨は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という神経の難病の患者さん方・その家族の療養、治療研究を支援しようというものです。

実は世の中には、ALSに限らず、難病を抱えた人々がたくさんいます。研究者の世界には、こうした難病を目の当たりにして、研究の道を志した人はたくさんいます。神経・再生の分野で世界に多大な貢献をされた故笹井芳樹先生も、ALSなどの患者さん方の診療を通じて、神経の研究に入られたのだということを、最近知りました(科学雑誌ニュートンでの対談)。

とはいっても、研究というものは、それなりに時間がかかります。今、難病があるがゆえに苦しみ、困っている人たちにとっては、未来の治療のための研究と同じくらい、いやそれ以上に、今の治療・療養のためのサポートがとても大事になります。それは、ALSならば同協会の活動の一部でもありますし、さらに大きな枠組みとしては、厚労省の特定疾患治療研究事業というものがありまして、ALSを含めた難病は、厚労省が特定疾患に定めて治療・研究の支援をしており、患者の自己負担の軽減がなされています。もちろん、さらにその基盤になっているのは、健康保険制度、いわゆる国民皆保険です。

難病は原因が殆どわかっていないものばかりです。逆に言うと、難病には、誰がかかってもおかしくないものなのです。そして、いったん難病にかかってしまうと、肉体・精神的な困難のみならず経済的にも大きな重荷を抱えることになります。これは誰が悪いわけでもない、不可抗力による困難です。そうして困っている人のことは、皆で助け合おう、万が一重い病にかかってしまった人は誰しも医療費を心配することなく良い医療をうけられるようにしよう、というのが公的健康保険制度の理念でしょう。

実は、難病に関して言うと、日本の健康保険制度は(厚労省の難病支援を含めても)万全ではなく、それなりの自己負担が生じ得ます。イギリスの健康保険に相当するNHS(国営の医療サービス)が、難病治療に関しては完全に無料であることを考えると、まだ日本の健康保険制度には改善の余地があります。

それどころか、こうした難病治療の基盤になっている国民皆保険制度が、近年の制度改悪・政治の無為・国民の無関心のために、危機に瀕して久しいです。手続き論はいろいろありますが、結局大事なのは、国民一人一人が見えない他人の困難を想像する力を持って、助け合いの精神を思い出すことかな、と思います。そして、みんなの共有財産である公的健康保険制度をより良いものに変えていくためにどうしたらいいかを考えることで、この制度は逆に危機を脱して再生できるのでは、と思います。

さて、こうした背景を踏まえて、次のチャレンジには、京都大学で神経科学の研究を押し進めていられる中村公一さん、幹細胞の研究で活躍されている小島洋児さんの二人の気鋭の研究者、そして元プロボクサーで震災後は気仙沼の本吉病院で復興と地域医療に尽力された川島実さんを指名させていただきました。川島さんは、この春で東北をリタイヤして休養中だったそうですが、最近UKのウェールズで開かれたトライアスロンIronman Wales 2014で「鉄人」になられたとのことです。今後が楽しみです。
posted by 小野昌弘 at 22:33 | TrackBack(0) | 科学・研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。