2013年12月26日

政治と日本語

「日本語は曖昧」という言葉を聞いた。
これは全く無意味だが、例えばオーウェルが政治の文脈で英語の文章に厳しく対決したような努力が、日本語で十分になされてはいない。最近の政治がここまで混迷した一因は、政治における思考と文の混乱と腐敗を放置してきたことにあるとさえ感じる。

オーウェルは、政治を伝える新聞記事・評論・政治意見など政治にまつわる文章で、曖昧な英語や無意味な文を使うことの弊害がいかに大きいかを、「1984」や「政治と英語」で詳細に検討。しかし、この方向での検討は、日本語で十分になされたとは言えない。

そもそも、日本語で明確な意味を伝え、論理的にそれを読む努力が日本で広く行われていたならば(これは英語圏では非常に大きな努力を払って行われていることですが)、「政治とカネ」をまつわる無意味な記事の大量放出も、それに国民が踊らされる事態もなかっただろう。
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2013年12月09日

秘密保護法:霜を履みて堅氷至る

「霜を履みて堅氷至る」
これは、霜が降りたら厚く氷が張る厳しい冬を予想しすぐに事を準備すべきだ、物事は小さなうちに手を打たなければ後で大変だという意味で、元々は易経の言葉。

さて、衆参ねじれが解消した途端、国会運営が異常化し秘密保護法まで登場したのが堅氷とすると、霜が最初に降りたのはいつになるか?参院選での安倍自民勝利による衆参ねじれ解消か、衆院選での民主党の壊滅的敗北か、菅元首相の消費増税による10年参院選自爆敗退か、と遡って考えていくと、やはりまずは鳩山政権崩壊に辿り着く。

あのとき鳩山元首相は、普天間移設の頓挫と「政治とカネ」の二つを理由にあげて辞任した。しかし、今では海兵隊が実は移動できたことが沖縄メディアによって暴露されており、普天間移設が頓挫したのは、外務省・防衛省のサボタージュと嘘が原因であったことが明らかになっている。

では「政治とカネ」は一体何だったのか。これは、政権交代目前の民主党小沢党首を標的とした検察によるクーデターというべき陸山会事件に始まる。マスコミ・議員らが、これ幸いと小沢氏を攻撃、貴重な政権交代が「政治とカネ」の大合唱で混乱に陥れられた。しかし一連の「疑惑」も検察幹部による捏造だったことが暴露された。

つまり、秘密保護法という「冬」の季節に至った最初の兆候は、検察が議会制民主主義に対して不当・不法に介入した陸山会事件であり、鳩山政権の表面下で進行していた防衛省・外務省の反鳩山政権を意識した政治行動であり、こういう民主主義への脅威を放っておいたからこそ、「冬」が到来した。

そして秘密保護法が、陸山会事件・鳩山政権崩壊に活躍した、検察・外務・防衛省の官僚らの秘密を保護するものであり、民主的手続きによる彼らの悪事を暴露させないようにするというところは、まさに09年政権交代に始まる民主化に対する反動の動きが一里塚に至ったとみるべきだろう。
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2013年02月19日

ロンドン、サウスバンクのイベント-The rest is noiseより、20世紀政治史

ロンドン・サウスバンクの現代音楽イベントーThe Rest is Noise
これは、20世紀の音楽と、政治・科学・他の芸術との関わりを考えながら振り返る。現代音楽のさらなる受容を目指すイベント。欧州の首都としての気概感じる、1年がかりの壮大な計画 http://t.co/ZENWaXvt

興味深いことに、このイベントは、83歳の政治家シャーリー・ウィリアムズによる、20世紀の政治の総括で始まった。

ウィリアムズ女男爵は欧州に第一次大戦が与えた衝撃を強調した。19世紀以来の英西ら帝国主義による世界分割の時代が一次大戦で終わるが、この大戦での欧州の犠牲者は史上最大(二次大戦より大)。しかし、戦勝国でも利益は僅少。しかもその後の二次大戦を予防できなかった。この欧州にとって一次大戦の苦い経験が、その後の紛争解決に対するコストと利益の考えを深めた契機になったとウィリアムズ氏は言った。

一次大戦以降の戦争は欧州から遠い場所で起こったと、ウィリアムズ氏は言う。実際、二次大戦の主たる死亡者は日本と中国であった。続くベトナム戦争は、米国とベトナムなど(私の補足:日本は二次大戦でこのコスト感覚を学んだのか疑問)

ウィリアムズ氏は欧州中心の20世紀政治史の45分間の講演で、三回日本に言及した。20世紀史での日本の存在は大きかったことを確認。その理由は次の3点。
1)一次大戦ころから、遅れて帝国主義に参加した日本が登場し、非欧州国として初めて世界政治に参加(その後、日本に続いたのはロシアと中国で、二次大戦でこの二国が日本を追い抜く)
2)原爆。氏は、人道(humanity)という概念が原爆の非人道的殺戮をへてようやく確立したと考える
3)質疑応答:原爆投下は正当化されるか?に対し(補足:ポツダム宣言にある、速やかな無条件降伏を日本が無視したため、低コストでの戦争終結のため、原爆はやむを得なかった、が公式理解)氏の答えは、「おそらく正当化されない」。理由は、連合国が日本の特質を理解する努力をせずに無条件降伏を強制したのは間違いだったと今は考えるから。日本において天皇は半神の存在であったと氏は理解。連合国が天皇の命の保護を約束すれば、原爆投下をせずとも日本は降伏しただろう、と氏は推測。

はるか日本より遠くのイギリスの政治家や市民が、今なお第二次大戦における日本の敗戦処理がそれで正しかったかどうかが考え、議論しているのだが、当の日本人は、どれだけ客観的に自らの歴史を捉え、考える努力をしているのだろうか。最近の中国に挑発的な政治家・マスコミの態度を見ていると、大変こころもとない。今こそ、二次大戦での誤りの数々を避ける手だてはあったのか、一人一人の日本人が真剣に歴史を考え直すべき時のように思う。
posted by 小野昌弘 at 08:49 | TrackBack(0) | 政治・社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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