2012年11月29日

鳩山氏政界引退に思う

鳩山由起夫氏は今月(2012年11月)の政界引退表明にあたり、『不出馬にあたって』というメッセージを発表している。

氏はこのメッセージで、沖縄の基地問題・平和外交・東アジア共同体という大きな道しるべを「次代の日本を担うあらゆる若者」に示し、語りかけている。そして「見えない放射能におびえる、若い母親」ら弱者の声に耳を傾ける政治をできるひとが味方なのだと言う。ぜひ多くの人に読んでもらいたい。
それにしても、真の新政権は鳩山政権だけだったとあらためて思う。この歴史的政権を、マスコミはくだらない「政治とカネ」で攻撃し、外務・財務官僚・民主党前原・岡田らは米国側の人間として(Wikileaksで暴露)サボタージュ・後ろから刺し、国民はその煽動にのって、皆で潰してしまった。

2年前の私のブログ記事、鳩山政権崩壊のすぐ後に書いた文章を、この場でもう一度紹介させていただきたい。
「なぜ怒りがアメリカではなく鳩山にむかったのか」



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2011年10月19日

TPPと医療(2)医師会がTPP反対の先鋒であることの意義

日本の医師は、一般的に待遇が悪いといわれるイギリスの医師にくらべても、随分少ない給料で長時間労働をしている。特に夜間の宿直体制は、多くの病院でボランティア的でありながら責任は重く、重圧となっている。

昔は、医師のこのような職務への献身的犠牲のかわりに、社会的な尊敬が与えられていたが、長期にわたる新聞テレビの、ごく一部の医師の不適切行為を誇張し、医師や医師会に対するネガティブな報道姿勢とともに、医師の無形の社会的尊敬もまた消失した。これが一部の医師が金銭的報酬を追求するよりなくなる悪循環となり、本来倫理性と理想により維持されていたシステムが綻びだしていた。

皆保険による診療報酬体系自体も、診療行為そのものへの支払いはありえないほど貧弱で、製薬会社・医療機器メーカー等への支払いが中心になっている。つまり医療費抑制の問題は、これらの企業に対峙することが重要だが、TPPや年次改革要望書はその全く逆で、企業の利益追求を保護しようとする。

一方で日本の患者の要求性は、世界的にみて非常に高く、コンビニと高級百貨店の両方の要素を要求し、現場の医療関係者への重圧となっている。これに医療訴訟を煽る新聞テレビの影響が加わって、医療は防御的となり、過剰な診療・検査へと圧力がかかっている。

つまり医療費抑制の問題は、製薬企業・医療機器メーカー・検査会社の利益追求の機会の規制と、国民皆保険制度を維持できながらも一定程度に高いレベルの医療を国民に提供するための、国民側の理解の2点が重要。この点からも新・年次改革要望書(U.S.-Japan Economic Harmonization Initiative)およびTPPは医療費問題の解決を困難にするとみられる。

実のところ、一部の医師は、TPPに盛り込まれるという混合診療の全面解禁を歓迎すると思われる。前出したように、日本の医師は先進国の中で最も労働条件がわるく給料が低いほう。欧米との格差を知ってより高い報酬を求める医師は、(欧米で起きたのと同様に)美容などの自由診療を志向する。

従って、医師会が朝日がいうように「既得権益を守る」利益追求団体であるならば、一部の医師に高給を保証するTPPに賛成するはず。しかし現実に医師会はTPP反対の筆頭。これは、日本の医師が、金銭ではなく倫理性と理想による医療体制を継続する意思表明であり、日本の医療にとって希望と思う。

(2011/10/16Twitter @masahirono より)
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2011年07月03日

フクシマにおいては、倫理が科学に優先すべきである

震災に引き続きおこった今回の東電福島第一原発の事故直後から、医学会・医学研究における国際世論においては、フクシマは放射線による影響を調べるための重要な機会であるとする意見が優勢であり続けているようです。このような世論が形成された理由は幾つかあるでしょうが、Nature, Lancet Oncologyといった有名な科学・医学雑誌において、福島住民に対する放射線被曝に関する健康調査を徹底的におこなうべきであるとする放射線専門家の意見がたびたび紹介されてきた影響も大きいと思います

私自身は、健康調査を行うこと自体は間違っているとは思いません。しかし、その調査はあくまで第一に調査されている、福島に住む住民のためであるべきだと強く感じます。医療が本来その基盤においているヒューマニズムの精神を忘れてしまうと、こうした調査はあやまった人体実験の一部に陥る可能性があることは、何度も歴史が我々に教えて来てくれたことです。

ですからこの問題は放射線という狭い学問の領域の問題ではないのです。医学や研究における倫理という大きな枠組みに関連した問題であり、さらには社会・政治に大きく関わった複合的問題です。

これらの状況をみて、私自身は、放射線の専門家ではありませんが、医師であり、また医学研究の広域にわたって複合的研究をおこなってきた専門家として、この問題に別の立場からの意見を述べる必要性を感じました。その意見文(レター)が、今週号(2011年7月2日発行)のBMJというイギリスの医学誌に掲載されましたので、これを翻訳して紹介します。

「フクシマにおいては、倫理が科学に優先すべきである」
Ethics should trump science in Fukushima(注)

小野昌弘

福島において全ての被曝者に対して被曝量を測定すべきだという提案がなされてきたが[1,2]、これに応じて日本の国立がん研究センターは、被曝した集団に対するコホート研究を行い、低線量被曝に関するリスクを調査することを予定している。また同センターは、福島住民に線量計を渡して累積被曝量を測定しようとしている[3]。さらに、放射線影響研究所は15万人を30年以上にわたって追跡調査する予定をたてている。

現在、避難区域が設定されてはいるものの、Ce-134/137による線量が600GBq/km2を超えるという、チェルノブイリでの「永続的管理地域」に相当するレベルの汚染があるホットスポットは、避難区域外においても珍しくはない[4]。憂慮すべきことに、公衆の許容線量が1mSv/年から20mSv/年にひきあげられたので、人々は影響をうけている地域で暮らせることになる。原発労働者の許容線量も100mSv/年から250mSv/年に最近引き上げられた。

フクシマのように危機がまだ進行中のところにおいては、科学的調査をおこなう機会というものは、医学のヒューマニズムの精神である「命を救い健康を守ること」に対して一歩譲るべきである。しかしながら、日本政府は影響をうけうる住民に対する具体的な医学的・社会福祉的な計画を明示していない。政府による適切なサポートがかけていることと、コホート研究に対する意欲的な計画の2つは、ひどく不釣り合いな様相を呈している。一方で、原発危機についての政府のアドバイザーのひとりが、政府による人々を守る意思に疑念を表明して辞任しているのである[5]。

文献
1. Delamothe T. Fukushima: lightening the darkness for next time. BMJ2011;342:d1987.
2. Moysich KB, McCarthy P, Hall P. 25 years after Chernobyl: lessons for Japan? Lancet Oncol2011;12:416-8.
3. The NCC proposes radiation-dose estimates and medical follow-up in Fukushima (in Japanese). www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E3E6E2E1E28DE3E6E2E6E0E2E3E39191E3E2E2E2;at=ALL.
4. Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT). Results of airborne monitoring by the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology and the US Department of Energy. 2011. www.mext.go.jp/component/english/__icsFiles/afieldfile/2011/05/10/1304797_0506.pdf.
5. Lack of Japanese government transparency on radiation leads to resignation [editorial]. Seattle Times2011. http://seattletimes.nwsource.com/html/northwestvoices/2014946815_lackofjapanesegovernmenttransparencyonradiationleadstoresignatio.html.

注)BMJの版権の問題があるので、無断での転載は控えるようお願いします。
posted by 小野昌弘 at 01:15 | TrackBack(0) | 原発問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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